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 ベッドに入ってから読むのに、短編集は丁度良いです。寝酒ならぬ寝本。でも、原田マハの「ごめん」1話目を読み終えたとき、寝本向きではなかったな、と思いました。続く3話も就寝前に読んだのですが、夢見の良いお話では、ありません
 「ごめん」全4話は裏切りが散りばめられた短編集です。かと言って、タイトルは謝っている訳ではありません。地名です。

 父に裏切られ、想いを寄せる人に裏切られた範子
 夫を裏切り、夫に裏切られていたようである陽菜子
 夫を裏切り、夫に裏切られている真っ最中の咲子
 親友を裏切り結果、友と恋を失った麻理子

 今まで読んだ原田マハには感じなかった、もんやりした気分が残ります。

 4話目の主人公・麻理子は美術商です。美術が絡むと元キュレーター原田マハ、ワクワクを感じずにはいられません。それが、親友クロが想いを寄せる男性に告白前夜その男を寝取る、しかもその相手の男もクロのコトが好きだと麻理子は知っている、という物語であっても。しかし、女は男を取るモノなのかなぁ。男もワケ分からないし。もしもクロと再会してもずっと、秘密にしておいて欲しいです。

   ところで麻理子は中国美術の売買その他で大成功を納めているのだけれど、同じ中国美術を扱った原田マハ著書に「#9」があります。こちらもお勧め。主人公の成長が著しすぎるお話。主人公の名前のせいか緋色のイメージの小説です。

 元に戻って「ごめん」。
どれも”それから”が気になります。

 範子は父を探すのか→多分、探さないような気がします。
 陽菜子はこのまま昏睡旦那の面倒を見るのか→うーん、姑がいなければあるいは。いや、いるから意地になるかもしれません。
 咲子は愛人と別れ、離婚するか→2人と別れ、心が舞い上がるような恋をして欲しいです。
 麻理子はクロを再会するか→会えないと思います。

 裏切りが散りばめながらも苦味だけが残るようなコトはありません。”それから”は彼女らで力強く切り開いて行くだろう、と思わせるし、そうであって欲しいです。ただ、麻理子だけはというか、麻理子もね、裏切る苦しさだけでなく、裏切られる苦しさも体験して欲しいとイジワルありんこは思ってしまうのでありました。